Story


【本編】

過去編 糸雨の華 

「自分にも誰かと同じ血が流れていると、独りではないと思いたかったんだ。」

地上 南大陸の中南西部、煙狼の森に父と母、居候で兄(姉)と慕うシャウラと四人で暮らす少年 嶺桜は、毎年父の故郷である魔界からやってくるキャラバンの来訪を心待ちにしていた。興奮して眠れない嶺桜は、シャウラを説得し普段は立入りが禁止されている父の書斎へと忍び込む。彼らがそこで見たのは、『禁忌の子』と題された父の手記だった。

 

 


過去編 啓白の皨 

「僕と一緒に行こう。君の ”楽しい” も ”嬉しい” も ”幸せ” も、きっと僕が見つけてあげるから。」

嶺桜はシャウラに連れられ、彼の作った巨大な浮島、天界の最上にある小さな孤島で1人孤独に過ごしていた。変わってしまったシャウラと慣れない天界に不安を訴える嶺桜をとある部屋に連れていくシャウラの影 ミトロン。「この部屋にある中から、どれでも一つだけ、君にあげよう。」こうして出会った謎の少年ベリアルと嶺桜、育まれるのは友情かそれとも……?

 

 


天界戦争編

「兄さん、僕はずっとずっとあなたが怖かった。」

ベリアルとの決闘、大敗を経て一つの意志を胸に天界に戻ったアモン。彼の目的は家族として、シャウラ共々天界を滅ぼすことだった。ミトロンと神の子ルシファーの協力のもと仲間を集め着々と戦争計画は進行していくが、その裏でガブリエルはルシファーの双子の弟 ミカエルを懐柔し計画を阻止するために動いていた。「あなたがその力で何をするのか、それがたとえ何であっても、僕にはあなたを止める力などないから。」

 

 


帝国編 地上(現在編)

「この国の誰もが知っている。本当の皇帝に相応しいのはお前だと。」

軍事大国として地上を席巻するナヴィガトリア帝国。同盟国である天界の機能停止に国内が揺れる中、兄皇帝により暗殺の危機に晒された皇子キノスラは従者グラフィアスと捕虜奴隷のアルニャートの助けを借り、間一髪亡命する。帝国の醜悪さを外から見た彼は、祖国を変えるべく仲間たちと旅に出た。

 

 

 


帝国編 魔界(現在編)

「誰にだって守りたいものがあるんだよ。それでもし、他の誰かを傷つけることになってもさ。」

魔界の特別自由自治区ラジエント。魔物との過酷な戦いを日々強いられる竜字軍地方支隊では、新たな人員を募るべく入軍試験を行っていた。そんな折、突然現れたのは黒い獣の容貌をした兄弟。帝国から逃げて来たという彼らの正体は……?その頃、帝国では魔界侵攻を目論む新たな計画が進んでいた。

 

 

 


天界崩壊編

 「きみはそうやって、何度でもぼくの前に立つんだね。」

帝国の裏切りによって甚大な被害を被った天界は再起不能状態に陥っていた。このままでは地上に落ちてしまう──ミカエルは天界の崩壊を防ぐべく、シャウラの依り代となることを決意する。しかし、それこそが黒幕の狙いだった。妄言に囚われ地上人のみならず、天使たちまで手にかけるシャウラ=ミカエル、今度こそ彼を止める為、ルシファーとアモンは天界へと戻る。

 

 


オリュメニア編(未来編)

「私はこの世界の進化を望んでいるわ。破壊から生まれる創造的な進化を。

    そのために人は、脆くて儚い命を持っているの。そして、戦いを永遠に繰り返すのよ。」

帝国革命および天界の崩壊からXX年、帝国に代わり魔法の力と圧倒的な技術革新で確実に版図を広げるのは、天界跡地に生まれた魔法使いの共和国オリュメニア。戦犯レサトが処刑を免れ亡命していたとの情報が地上全土に流布され、キノスラ率いるナヴィガトリアは更生の道半ばで再び窮地に陥っていた。一方で、弟を救うため単身敵の根城に乗り込むつもりのベルフェゴールだったが……。

 



【番外編】

銀の斜

—―可哀想なガブリエラ、誰もあなたを悼まない。

北欧州のとある農村に生まれた仲睦まじい双子の少女達。顔も背格好も瓜二つの彼女達だが、性格は似ても似つかず正反対だった。ある時、姉・二二エラと妹・ガブリエラ、そのボーイフレンド サミュエルの3人は新しく作られる研究所88を見ようと裏山へ向かう。途中、恋人に渡そうと野花を詰みに1人脇道へ逸れるサミュエルだったが、突如悲鳴が響き渡る。山頂で彼を待ち受けていたのは非情な現実と‘1人の少女’だった。

 

 


砂炎世界と白亜の獣

「約束しよう、もしまたどこかで巡り合えるなら私は貴方と共に生きると。」

光と影、2人の精霊王の間に産まれた禁忌の子シャウラ。彼が自らの影を犠牲に生み出したのは、人の心を持った災厄そのものだった。強大すぎる力を抱え、産まれながらに人々に恐れられてきたルーキスは、唯一自分を恐れず語りかけてくるカシャイールに対し次第に心を開いていく。しかし、カシャイールもまた、希望の世界王として贄となることを人々から望まれ生まれた存在だった。誰かが見てきた別の世界のお話。

 

 


黒尤記

「守るものと守られるもの、竜王は二種類の人類を作った……と。」

軍務の大家 フィーグナー家の嫡男であるラルティシアスは、殉職した同僚の葬儀で見慣れない白犬を目にする。妻 マルシアとよく似た目元、憂いに満ちた怪しい美しさを湛える青年 グラシアとの出会いと世界を覆う災厄のはじまり。この世界の守護者は、はたしてどこにいるのだろうか。ラルティシアスはその答えを探しに、暴風と氷雪に閉ざされた銀世界、遠い昔に忘れ去られた白い記憶の中へと旅立った。

 

 


白犬簿

「飽食の獣、まつろわぬ者よ。あなたにそれは相応しくない。」

古くからこの地では、白い毛並みを持つ犬は世に繁栄をもたらす贈り物であるという――。白犬として産まれ、医術の大家 ウィンガー家に引き取られたグラシア。軍人ラルティシアスとの出会いや母の死、ガーディロウ博士との研究を通じ、彼は少しずつこの世界の在り方に疑問を抱いていく。世界を縛る法律の鎖は誰の為にあるのだろうか。

 

 


梔子屋敷の尤

「正義が強者を護る法なら、悪が弱者を護る法でも良いだろう。

ライムは種族の違う両親のもとに産まれ、理不尽な差別と偏見に晒されながら生きてきた。伯母との出会いを機に屋敷を出た彼だが、守るべき弟妹たちのために己を偽り命を燃やすうち、裏社会へとその足を踏み入れていく。ある時、生家 梔子屋敷に秘められたある盟約の存在を知った彼は、復讐と簒奪の計画を始動させる。