生まれついたこの身を罪と呼ぶならば、俺に罪を背負わせたあなたこそ原初の罪と呼ばわれるべきではないのか。
「――エリヤ。忌まわしき焔から這い出た罪のこども」
あなたは言った。この小さな畑の土壌には、俺が燃やした母の灰が混ぜ込まれているのだと。あなたの怨みを子守唄に育った俺は、母の土で生った母の肉を食らって生きてきた。
「お前の髪は、お前の母を灰にした焔と同じ色をしている」
俺は、誰かを傷つけるために生まれてきたんじゃない。
「呪われてあれ。呪われてあれ。――呪われてあれ!」
ああ、そのはずだったのに。
俺の腹に跨がって首に指を絡ませるあなたを突き飛ばしたこの手のひらは、燃えていた。
焔が。燃える。盛る。猛る。全てを飲み尽くして、無に帰さんと。
何度水をぶち撒けても激しい風を纏った焔が消えることはなかった。足の裏が擦り切れて泉と家に血の道が成る頃になって、ようやく嘘のように火炎は立ち消えた。
生まれついたこの身を罪と呼ぶならば、俺に罪を背負わせたあなたこそ原初の罪と呼ばわれるべきだった。
炭になって灰になって、全て焼き切れた後には、もう俺にしか罪はない。
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『紅、華立ちて』主人公エリシャの父エリヤの幼少期の話